
ヒップホップ / オルタナティヴとジャズ・ラップ · 1993
Reachin’ (A New Refutation of Time and Space)
Digable Planets
Reachin' (A New Refutation of Time and Space) · Digable Planets
この一枚を聴く理由
くつろいだ響きの内側で、三人の言葉が細かく動き続ける。
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収録曲・試聴
日本語編集版
アルバムの物語
《Reachin’》の心地よさは、何も起こらない穏やかさではない。丸みのあるベースや繰り返す短い音に、三人が違う位置から言葉を入れていく。最初は雰囲気に身を任せてもよいが、次には音節の置かれる場所を追いたい。ゆったりした表面の下に、忙しく動くリズムが見つかる。
1993年に発表されたDigable Planetsのデビュー作である。Butterfly、Doodlebug、Ladybug Meccaの三人は、ひとつの声を分け合う存在ではない。句の終わりを収める位置や、次の言葉へ進む速度に違いがある。Doodlebugは2011年のインタビューでButterflyの制作とニュージャージーでの録音を振り返った。ジャズの色が濃くても、ジャズ・バンドを伴ったラップの実演記録と捉える必要はない。選ばれた音とビート、声を組み合わせたスタジオ作品なのだ。
借り物という距離を越えて
2018年に公開されたライナー・ノーツのインタビューで、Butlerは家にいつもジャズが流れ、学生時代にはアルト・サックスを吹いていたと語っている。高級な装飾としてジャズを加えた、とだけ説明するよりも、身近な音楽の語彙として考えられる。ただし元のレコードを全部知ることが入場条件ではない。繰り返す音の長さと、その上を進む文章の長さを比べるだけでも面白い。
話し方が場所を作る
It’s Good To Be HereからWhere I’m Fromへ進むあたりで、三人の居場所が少しずつ見えてくる。虫を思わせる芸名や宇宙的な題名を、決まった物語に組み立てなくてもよい。彼らが言葉を交わす仕方そのものが、その世界の日常として聞こえる。ある声の最後の音と次の声の入口に注意すると、同じ伴奏が違う表情を持つ。一人ずつの違いを感じることと、グループの一体感を楽しむことは両立する。同じ曲を繰り返すなら、毎回一人の声に注目してみよう。その後で三人を一緒に追うと、共有する空間の作り方が見えやすい。
一曲の印象で閉じない
Rebirth Of Slickは入りやすい一曲だが、その柔らかな印象だけでアルバム全体を片づけたくない。後半まで進み、長い文章と短い繰り返しの比重がどう変わるかを追おう。ここで扱うのは十四曲の基本プログラムである。再発盤が二枚のLPに広げられたことは、新曲を追加したという意味ではない。最後のExamination Of Whatまで聴けば、力を抜いた話し声のようなラップにも、言葉とリズムを選び続ける集中があることを感じられる。
曲からたどるアルバム
Rebirth Of Slickから入り、冒頭へ戻って三人の声が交替する箇所を追ってみる。
Rebirth Of Slick (Cool Like Dat)
ベースの反復と覚えやすい短いリフレインが、最初の手がかりになる。そのあと三人が句を置く位置に耳を向けると、同じ伴奏がそれぞれの違いを測る目盛りのように働く。拍に収まる音と、その前後に余裕を残す音を比べてみよう。KEXPの回顧記事が記すようにシングルはアルバムに先行したが、ここではリミックスやライブ版ではなく、十四曲入り音源の六曲目を扱う。リフレインだけを覚えたあと全体へ戻ると、よく知る短い言葉の周囲で動くラップが見えやすくなる。気楽に聞こえることと、リズムが単純であることを同じにしないための一曲だ。
参考資料 · KEXP: Ishmael Butler interview, March2018Where I’m From
出身を尋ねるような題名を、地図上の一点だけに結びつけず、音楽や話し方が作る環境として受け取ってみたい。Butlerが家庭のジャズを振り返った言葉も、その親密さを考える手がかりになる。ただし歌詞のすべてを本人の事実記録と決めつけるわけではない。まず伴奏の反復を覚え、声が入った瞬間に強調される場所が変わるかを追ってみよう。ループは背景に退くばかりでなく、文章の進む方向に関わる相手にも聞こえる。元のレコード名を全部言えなくても、その働きは感じられる。聴き終えたら冒頭の曲へ戻り、二つの曲が紹介する居場所を比べたい。
参考資料 · KEXP: licensed Larry Mizell Jr. liner-note excerpt, February2018
次に聴く一枚
A Tribe Called Quest《People’s Instinctive Travels and the Paths of Rhythm》では、サンプルと言葉の関係が別の声で広がる。
People's Instinctive Travels and the Paths of Rhythm ↗参考資料と編集について
日本語の読者に向けて独立して編集した記事です。作品の事実関係は下記の資料を参照し、聴きどころは編集上の解釈として記しています。AIによる編集・検査を実施しており、第三者の読者による実査ではありません。
- Modern Classics / Light in the Attic: MCR924 official14track programme · lightintheattic.net
- KEXP: Ishmael Butler interview, March2018 · www.kexp.org
- KEXP: licensed Larry Mizell Jr. liner-note excerpt, February2018 · www.kexp.org
- Rapstation: Doodlebug interview, December2011 · rapstation.com
- Apple Music: explicit14track album · music.apple.com