ヒップホップ / ハードコアとウータン · 1998
It's Dark and Hell Is Hot
DMX
この一枚を聴く理由
同じざらついた声が、集団への呼びかけ、人物の演技、祈りへ役割を変える十九曲。
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収録曲・試聴
日本語編集版
アルバムの物語
DMXの声は一度聴くと覚えやすい。しかし《It’s Dark and Hell Is Hot》をひたすら叫ぶアルバムと考えると、声の仕事が変わる面白さを逃してしまう。「Ruff Ryders’ Anthem」では集団の応答を引き出し、「Damien」では会話によって場面を進める。同じざらついた音色でも、誰に向かって話しているかで曲の形が変わる。強さは音量だけでなく、言葉を置く位置と役柄にもある。
1998年にRuff RydersとDef Jamから発表された初のスタジオ・アルバム。短いスキットを含め、原盤は十九トラックだ。制作の中心にはデイム・グリースとP.K.がいて、スウィズ・ビーツは「Ruff Ryders’ Anthem」を担当。「Intro」と「Crime Story」にはアーヴ・ゴッティとリル・ロブの制作クレジットがある。一人のプロデューサーが統一した背景ではなく、異なる作り手の曲を強い声の個性が結び付けている。
反復を集団へ開く
二曲目の短いシンセサイザーの型と、切れ目を感じさせるドラムは、フックの応答を大きく見せる。六曲目の「Get at Me Dog」はシークを迎え、デイム・グリースの制作にP.K.の追加制作が加わる。どちらも強烈だが、同じ方法で同じ効果を作った曲ではない。伴奏が繰り返す場所でラップがどう区切られ、次の語がどう入るかを見ると、粗い音色にも異なるリズムの設計がある。
一人の声で相手を変える
「Damien」の対話から「How’s It Goin’ Down」の人間関係へ、盤の中央では話しかける相手が変わる。「Stop Being Greedy」も異なる声の性格を使い分ける曲だ。発言をすべて一つの自伝的な宣言としてまとめるより、話す人物と返答する人物を分けて考えた方が、演技の仕組みが見えやすい。声を別人のように変えることと、同じ人物として覚えられることが同時に働いている。
祈りの後にも曲がある
「Prayer」は十七曲目であり、その後に「The Convo」と最後の合唱的な共演曲が残る。祈りがすべてを解決して終わる、という説明では実際の順序を捉えられない。神に語りかけた後、複数のラッパーが集う場面へ戻る構成になっている。約一時間の中でスキットも場面を区切り、話し手の立場を切り替える役割を持つ。代表的なシングルから入り、終盤まで辿ると、荒々しさという一語の内側にいくつもの形式が収まっていることが分かる。
曲からたどるアルバム
二つのシングルで反復とフックの働きを比べ、十七曲目の「Prayer」の後にも二曲が続く順序を確かめよう。
Ruff Ryders' Anthem
スウィズ・ビーツが作る短いシンセサイザーの反復と、切れのあるドラムが、応答を誘うフックの土台になる。DMXは全ての拍を同じ長さの言葉で埋めず、強く入る部分と余白を使い分ける。そのため一人の声が集団へ開かれるように感じられる。フックが戻るたびに新しい和音を足す必要はない。予測できる反復があるから、声の強勢が際立つ場面もある。二曲目という位置は、その後に私的な対話へ進むアルバムの出発点としても重要だ。最も有名な曲という評価だけでなく、長い作品の初めにどんな姿を提示するかという役割から聴くと、単純な材料の使い方がよく見える。
参考資料 · uDiscover Music — Ruff Ryders and Swizz Beatz productionGet at Me Dog
デイム・グリースの制作にP.K.が追加制作で参加し、シークを迎えた曲。「Ruff Ryders’ Anthem」と同じ強さを持ちながら、制作の組み合わせは異なる。反復する伴奏に対して言葉の終わりを急に閉じたり、次の句を強く入れたりすることで、ざらついた発音がリズムの圧力になる。単に声が大きいという説明では捉えにくい部分だ。六曲目に置かれ、間に挟まるスキットなどを経て直接的な呼びかけを再び強める。続く「Let Me Fly」まで進めば、この一曲の切迫感がアルバム全体の唯一の表情ではないことも分かる。強烈な入口であると同時に、後の変化を測る基準になる曲だ。
参考資料 · Qobuz / Def Jam — explicit programme and production credits
次に聴く一枚
前年の《Life After Death》と、長い構成の中で客演、フック、物語をどう配置するか比較したい。滑らかか荒いかという二分法だけでは両作の内部の変化を捉えきれない。
Life After Death ↗参考資料と編集について
日本語の読者に向けて独立して編集した記事です。作品の事実関係は下記の資料を参照し、聴きどころは編集上の解釈として記しています。AIによる編集・検査を実施しており、第三者の読者による実査ではありません。
- 0207 Def Jam — original nineteen-track programme · shop.0207defjam.com
- Qobuz / Def Jam — explicit programme and production credits · www.qobuz.com
- uDiscover Music — album context and contrasting vocal roles · www.udiscovermusic.com
- Apple Music — nineteen-track explicit delivery · music.apple.com
- uDiscover Music — Ruff Ryders and Swizz Beatz production · www.udiscovermusic.com