日本の音楽 / 電子音楽・テクノポップ · 1974
月の光(Snowflakes Are Dancing)
冨田勲
月の光 · 冨田勲
この一枚を聴く理由
知っている旋律でも、音の生まれ方と消え方が変われば別の景色になります。楽器の名前を当てずに、響きの輪郭を追ってみてください。
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収録曲・試聴
日本語編集版
アルバムの物語
「月の光」の旋律を知っているなら、次の音を先回りして待つかわりに、いま鳴っている音がどれほど長く余韻を残すか聴いてみましょう。冨田勲の電子音では、音符の間も一つの出来事になります。ドビュッシーを初めて聴く人にも入り口は同じです。短く弾む響きと、空間にとどまる響きを分けて追うだけで、音楽の動きが違って感じられます。
1974年に米RCAから発表された《Snowflakes Are Dancing》は、日本では《月の光》として知られます。作曲はドビュッシー、電子音による編曲と演奏は冨田です。2005年のJASRACのインタビューで、冨田は旋律よりも音の色彩にひかれた経験や、自分自身の楽器音を作りたいという考えを語っています。ピアノをどこまで本物らしく再現できたか、という問いだけに聴き方を限定しない手掛かりになります。
曲ごとに変わる響きの天気
冒頭の「雪は踊っている」から「夢」へ進み、さらに「雨の庭」と「月の光」を比べてみましょう。曲の速さだけでなく、一つの音が短く終わるか、長く続くかでも動きの印象は変わります。題名は景色を思い浮かべる助けですが、決まった絵を正確に当てる必要はありません。二度目に聴くとき、最初は名前を付けられなかった音が、どんな形として記憶に残っているかを確かめてみてください。 とくに前半の曲順を飛ばさずに聴くと、余韻が長い曲のあとで短い音に出会う感覚も変わります。一曲の音色だけでなく、その前に何を聴いたかも手掛かりになります。
電子楽器にも解釈がある
シンセサイザーは電子的に音を作り、変化させる楽器です。機械が勝手に演奏を完成させたと考えると、編曲者の選択が見えにくくなります。旋律にどんな色を与えるか、周囲の響きをどこまで残すかも解釈の一部です。後でピアノによる演奏を聴けば、同じ音符でも耳が向く場所の違いを楽しめます。どちらが上かを決める比較ではなく、自分の注意の動きを知る比較として試せます。
原盤と再制作を区別する
案内する配信版は全11曲です。ソニーの原曲順による再発案内は「雪の上の足跡」までの10曲で、配信には「牧神の午後への前奏曲」が続きます。2012年のUltimate Editionは別のリメイクで、公式サイトによれば2021年の東京五輪閉会式で使われた「月の光」はその版です。一方、1975年のグラミー賞候補記録は発売直後の評価を示します。後年の式典で再び聴かれたこととは分けて受け止めたいところです。まず10曲目までの流れを聴き、それから追加曲へ進むと、この版の構成が分かりやすくなります。
曲からたどるアルバム
冒頭の曲と4曲目の月の光で、音が生まれる瞬間と余韻の長さを比べてみてください。
Suite Bergamasque: Clair de Lune, No. 3
知っている旋律を見つけたら、今度は一つの音の始まりと終わりへ耳を移しましょう。音が出る瞬間、長く残る色、消えるところのどれが気になるでしょうか。ピアノでは鍵盤を押す感触が中心になる場面でも、ここでは音と周囲の響きが出会う様子を楽しめます。どちらが美しいか、すぐに決めなくても構いません。東京五輪の閉会式でこの曲を知った人は、公式案内が使用音源を2012年のリメイクとしている点に注意してください。ここで案内する初期録音の系統と同じ音源だとは考えず、旋律を道しるべに違いを探せます。短い試聴ではまず音色と余韻を確かめ、一曲全体ではその印象がどう変わるか追ってみましょう。
参考資料 · TOMITA information Hub: 2021 ceremony and 2012 remake distinctionChildren's Corner: No. 4: Snowflakes Are Dancing
小さく動く音を数える前に、集まったり散ったりする印象を追ってみてください。雪という題名は想像を助けますが、実際の雪の音を再現したかどうかを判定する必要はありません。選ばれた音色がどんな運動を感じさせるかが、聴くためのよい問いになります。次の「夢」へ続けると、この短い冒頭の記憶も変わるでしょうか。アルバム名になった曲が、最も長く壮大でなくてもよいのです。耳を新しい響きへ慣らす役割を、小さな始まりが果たすこともあります。「月の光」まで進んでから戻り、最初は奇妙に聞こえた音のうち、どれがはっきりした形として残ったかを確かめてみましょう。
参考資料 · Sony Music: original programme and 2004 reissue BVCC-37405
次に聴く一枚
YMOのSolid State Survivorへ進むと、電子音の色彩が短いポップ形式と規則的な拍の中でどう働くか比べられます。
Solid State Survivor ↗参考資料と編集について
日本語の読者に向けて独立して編集した記事です。作品の事実関係は下記の資料を参照し、聴きどころは編集上の解釈として記しています。AIによる編集・検査を実施しており、第三者の読者による実査ではありません。
- Sony Music: original programme and 2004 reissue BVCC-37405 · www.sonymusic.co.jp
- JASRAC: Isao Tomita interview, 2005 · www.jasrac.or.jp
- Recording Academy: Isao Tomita nominations · www.grammy.com
- TOMITA information Hub: 2021 ceremony and 2012 remake distinction · www.isaotomita.jp
- Apple Japan: eleven-track Snowflakes Are Dancing edition · music.apple.com