日本の音楽 / ヴォーカルポップ・R&B · 1999
First Love
宇多田ヒカル
この一枚を聴く理由
拍子に軽く乗る声と、長く残るバラードが一枚にある。大きな売上の記録より先に、言葉の速度と旋律の出会いから聴けるデビュー作です。
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収録曲・試聴
日本語編集版
アルバムの物語
『First Love』の声は、拍子を捉えながら、その上で少しずつ違う長さを作ります。速い曲には体の動く流れがあり、遅い曲には一音を残す時間がある。表題曲だけを知って来ても、冒頭の「Automatic」ですぐに別の顔に出会います。
1999年3月発表のデビュー・アルバムです。オリコンは2018年のファン層分析で約765万枚の売上に触れており、広く届いた作品であることがわかります。ただし、その過去の数字を現在の売上や音楽の優劣として扱うわけではありません。聴く中心に置きたいのは、R&Bのリズムと覚えやすい旋律が、一つの声の中でどう結びつくかです。
上手さだけでは言い切れない話し方
歌唱力という一言では、この声の面白さを説明しきれません。一節をどこで始め、どの言葉を短く終えるかによって、リズムの感じが変わります。伴奏が一定でも、歌の文は前へ傾いたり、少し余裕を作ったりする。批評的には、言語とリズムが出会う具体的な選択を追えます。初めての人なら、「Automatic」の体が動く感じと、表題曲の長い息を比べるだけでも違いがわかります。難しい用語より、同じ声が違う時間を作ることを聴いてみたい作品です。
バラードだけで覚えない
原盤は「Automatic」から「Movin’ on without you」「In My Room」を経て表題曲へ進みます。最初から遅い歌が全体を代表しているわけではありません。その後にも違うリズムや声の距離が続き、CDでは「Automatic」のリミックスもボーナスとして載っています。バラードの気持ちと、踊れる曲の楽しみが同じ人の世界にある。その並びを聴くと、知っている曲を待ちながら飛ばしていた部分が気になるかもしれません。アルバムを思い出すときの顔も、少し変わってきます。
みんなの記憶と、初めての一回
「First Love」はアルバムのあと、1999年4月にシングルとして発売され、ドラマ『魔女の条件』の主題歌に使われました。盤、放送、シングルという複数の道が、一曲へつながったわけです。ただ、日本でのなじみ深さを海外の読者へ前提として求める必要はありません。ドラマを知らなくても、声と旋律の関係から十分に入れます。今回は広い接点と、繰り返すほど気になる歌い方の細部を、どちらも選定の理由にしました。記録を知って驚くだけでは終わらない一枚です。歌詞を読んで理解する時間と、意味を追わず声の動きを楽しむ時間を分けてもよいでしょう。同じ一節が別の形で残るなら、その差もこの歌い手を聴く面白さになります。
曲からたどるアルバム
同じ声が、速い曲と遅い曲で言葉をどれだけ長く残すかを比べてみてください。
Automatic
リズムが流れる上に、声が軽く乗っているようです。強い音だけでなく、言葉を短く終えるところや次を待つ時間も耳をつかみます。アルバムの一曲目にあることで、バラード中心だと思って来た人へ違う方向を示します。公式曲目では冒頭のアルバム・エディットと、最後のボーナス・リミックスが区別されています。同じ曲の重複と考えず、周囲のリズムが替わると声の印象がどう動くか聴いてみてください。足で拍子を取り、その拍子と声が会う場所へ注意を移すだけでも、同じ旋律が違う体の動きを作ることを感じられます。声をリズムとして楽しむ、一つの入り方です。
参考資料 · Universal Music: original First Love albumFirst Love
速いリズムの代わりに、一音を持ち続ける時間が中心になる曲です。知っている旋律でも、一節を終える息と、次を始めるまでの間を聴くと違う顔が見えます。公式紹介では1999年4月のシングル発売と『魔女の条件』の主題歌使用が記され、3月のアルバムとは順番が異なります。一曲が別の場面で何度も届いたことを考えられます。映像が浮かぶなら一度はその記憶と、次には音楽だけで。初めてなら歌詞の細部より、声の終わりを支える伴奏と空白を追ってみてください。それだけでも十分に近づける歌です。同じ曲でも、聴く対象を替えると違う時間が生まれます。
参考資料 · Universal Music: First Love single and television connection
次に聴く一枚
同時期のもう一つの強い声、椎名林檎『勝訴ストリップ』で、言葉とバンドの関係を比べてみてください。
Shōso Strip ↗参考資料と編集について
日本語の読者に向けて独立して編集した記事です。作品の事実関係は下記の資料を参照し、聴きどころは編集上の解釈として記しています。AIによる編集・検査を実施しており、第三者の読者による実査ではありません。