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ザ・バンド

ロック / シンガーソングライターとアメリカン・ロック · 1969

ザ・バンド

ザ・バンド

The Band · The Band

この一枚を聴く理由

歌い手と楽器の役割が曲ごとに変わり、十二の短い物語から一つのバンド像が浮かぶ。

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収録曲・試聴

日本語編集版

アルバムの物語

このアルバムを一人の歌手の作品として覚えようとすると、すぐに別の声が現れる。冒頭の「Across the Great Divide」はリチャード・マニュエル、続く「Rag Mama Rag」はリヴォン・ヘルム、「When You Awake」はリック・ダンコ。それぞれの登場の仕方は違うが、伴奏まで別の集団になったようには感じない。先ほど主役だった人が、次の場面では誰かを支える。その交代がレコード全体の性格を作り、次の曲への期待も変えていく。

1969年発表の二作目で、元の構成は十二曲。ここでは現行のCapitolリマスター版を案内し、2019年のボブ・クリアマウンテンによるリミックスとは分けて扱う。制作にはロサンゼルスの住宅に設けた録音場所と、ジョン・サイモンとの協働が関わった。茶色い写真から昔の風景を想像しても、音まで単純に古い様式へ収まるわけではない。電気的に変形した鍵盤の響きも、この作品の重要な材料である。

同じ鍵盤奏者の違う仕事

ガース・ハドソンはインタビューで「Rag Mama Rag」のピアノを自分の演奏として挙げている。一方、「Up on Cripple Creek」で目印になるのはワウを通したクラヴィネットだ。二曲を並べると、鍵盤という同じ分類でも、打音の重さと短く跳ねる音色では伴奏への働き方が違うと分かる。楽器名を暗記するより、歌の動きをどの音が細かく区切っているかを比べる方が、このバンドの工夫を捉えやすい。

長く伸ばさず、場面を替える

曲の多くは三分台か四分台に収まる。長い独奏を頂点に据える代わりに、次の曲へ移ることで景色が変わる。「Whispering Pines」から「Jemima Surrender」への流れでは、前者の柔らかさが後者の進む力によって改めて際立つ。似た長さの器に異なる性格の曲を置くからこそ、順番にも意味が生まれる。まずは有名曲だけを抜き出さず、隣り合う曲の関係を残したまま進めてみたい。

結末を一人に任せない

最後は「The Unfaithful Servant」と「King Harvest」。異なる立場の人物を掲げる二曲を、ダンコとマニュエルが順に歌う。一人の主人公が大きな結論へ到達する構成ではなく、別の経験が最後まで加わっていくように受け取れる。終曲のあとで冒頭へ戻れば、そっけないほど単純なアルバム名も違って見える。代表者一人の名を示すのではなく、違う歌を同じ場で成立させる集団の名前として読むことができる。

曲からたどるアルバム

序盤の歌い手の交代と五曲目のクラヴィネットを比べ、そのまま最後の二曲まで進めたい。

  1. The Night They Drove Old Dixie Down

    ヘルムが主役を担う三曲目。ロバートソンが書いた南北戦争期の人物の物語を、約三分半に収める。まずは筋書きを覚えるより、語る部分と複数の声が加わる部分の大きさを比べてみたい。一人の回想として始まる歌が、ほかの声によってより広い場面へ開かれていく。直前の「Rag Mama Rag」もヘルムの歌なので、同じ人が異なる曲調をどう担うかという比較もできる。ここで選んだのは本作のスタジオ録音であり、後年のライブや別の歌手によるカバーではない。長い独奏を置かず、繰り返す節の中で物語を形にする点にも注目して、前後の曲と聴き比べたい。

    参考資料 · Universal Music Canada — original programme and distinct 2019 remix
  2. Up On Cripple Creek

    五曲目の目印は、ハドソンがワウを通して弾くクラヴィネット。短く跳ねる鍵盤音が、ヘルムの歌の周囲で独特のリズム感を作る。本人はインタビューでこの組み合わせに触れつつ、誰が最初だったかは断定していない。発明の順位より、この曲の中で何をしているかに耳を向けるとよい。持続するオルガンの響きとは違う、音の立ち上がりと切れ方を手掛かりにできる。続く「Whispering Pines」まで聴けば、明るく動く質感から別の表情へ切り替わる効果も分かる。選定音源は元の十二曲に入る通常テイクで、拡張版の別テイクとは区別している。

    参考資料 · The Acoustic Storm — Garth Hudson interview, October 2004

次に聴く一枚

ウディ・ガスリーの『Dust Bowl Ballads』へ進み、人物の生活を語る歌が、多彩なバンド編成から簡潔なフォーク伴奏へ移るとどう変わるか比べたい。

Dust Bowl Ballads ↗
参考資料と編集について

日本語の読者に向けて独立して編集した記事です。作品の事実関係は下記の資料を参照し、聴きどころは編集上の解釈として記しています。AIによる編集・検査を実施しており、第三者の読者による実査ではありません。