ブルース / シカゴ・エレクトリック・ブルース · 1970
I Am the Blues
Willie Dixon
この一枚を聴く理由
作曲家自身の声で、知られた曲の時間を組み直す。言葉の後に残る間とバンドの応答を聴く九曲。
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収録曲・試聴
日本語編集版
アルバムの物語
「Back Door Man」の冒頭から、ウィリー・ディクソンは急いで結論へ向かわない。一節を置くとバンドがその後の時間を受け持ち、次の言葉が入る場所を作る。六分を超える長さにも、声と伴奏が順番に重さを加えていく動きがある。曲名を知っていることより、誰がどんな速さで話すのかを聴きたくなる始まりだ。
本作は、他の歌手を通じても知られるレパートリーをディクソン自身が歌ったアルバム。過去のヒット録音を集めた編集盤とは区別したい。再発レーベルMusic On Vinylは原盤の年を1970年と明記する一方、Sonyの配信には1969年の音源権利表記も残る。異なる記載を同じ発売日の情報として扱わない。音楽としての出発点は、作曲された最初の瞬間を保存した資料ではなく、歌い手が改めて組み立てる一連のスタジオ演奏にある。
言葉の終わりに注目する
低い声の中心は、高音へ駆け上がる迫力とは別のところにある。言葉をどれだけ長く残すか、次の一節までどれほど待つか。その違いが、繰り返す伴奏の重みも変えていく。長い曲を、短い歌に独奏を足したものとだけ考えないようにしたい。声が休む間にもリズムは働いており、次の登場を準備する。何も起きていないような間に耳を向けると、歌とバンドの会話が見つかる。
知っている曲をいったん離す
前半の「Back Door Man」と「I Can’t Quit You Baby」が大きな時間を占めた後、「The Seventh Son」「Spoonful」で歩みが変わる。後半には「You Shook Me」「I’m Your Hoochie Coochie Man」「Little Red Rooster」と親しみのある題名が続く。他の歌手の声を思い出すのも楽しみだが、最初はこの録音の語尾と伴奏の返答に集中したい。覚えている旋律を確認するだけではない、別の時間の使い方がはっきり聴こえてくる。
作者の歌を唯一の正解にしない
最後の「The Same Thing」まで、一つの声が九曲をつないでレパートリーの幅を示す。強いアルバム名も、そのまとまりの中で受け取れるだろう。ただし作者が歌った版だから他の演奏より正しいと決める必要はない。同じ曲が別の声や身体を得る過程を比べる入口として聴けばよい。まず九曲を順に聴き、次には一曲を選んで別の歌手の録音と並べてみよう。声量や楽器の数ではなく、一節が終わってから次が始まるまでの間に注目すると、解釈の違いを具体的に感じられる。
曲からたどるアルバム
歌が止まった後、楽器の返答がどれほど続いて次の言葉へつながるかを聴こう。
Back Door Man
六分を超える長さが、声とバンドの両方に居場所を与える。最初は拍を追い、次にはディクソンが言葉を終える位置へ意識を移したい。伴奏はその間も進み、次の歌い出しに力を蓄える。他の歌手の版を知っていても、その声を期待せず、この低い声がリズムにどう乗るかを聴いてみよう。作曲者自身の演奏だからといって、最初に録音された版とは限らない。案内するSonyの一曲目は、約六分十三秒の本作のスタジオ演奏。以前のシングルや別の公演に置き換えず、この長さの中で反復が積み重なる様子を確かめたい。声のない部分も大切な聴きどころになる。
参考資料 · Apple Music: Sony nine-track digital editionSpoonful
短い音型が戻るたびに、声の置き方がその重みを変える。一語を長く残したり、次の言葉を少し待ったりするだけでも緊張は作れる。まず声を追い、次には同じ部分の伴奏へ耳を移してみよう。二つが異なる速さで進みながら、一緒にいるように感じられる。本作では「The Seventh Son」に続く四曲目で、約五分のスタジオ録音だ。他のバンドによる長い演奏を覚えている場合も、その期待をいったん離して聴きたい。どちらが決定版かを急いで選ぶより、一節の終わりと次の始まりの間を比べる方が、それぞれの時間の使い方を発見できる。
参考資料 · Music On Vinyl: I Am The Blues,1970 andnine-track programme
次に聴く一枚
ココ・テイラーのセルフ・タイトル盤と並べ、ディクソンの曲が別の声で得る長さと重みを比べたい。
Koko Taylor ↗参考資料と編集について
日本語の読者に向けて独立して編集した記事です。作品の事実関係は下記の資料を参照し、聴きどころは編集上の解釈として記しています。AIによる編集・検査を実施しており、第三者の読者による実査ではありません。