フォーク・カントリー / シンガーソングライター・フォーク · 1970
After the Gold Rush
ニール・ヤング
After the Gold Rush · Neil Young
この一枚を聴く理由
小さな歌と強いバンドの間でも、声の危うさが消えずに残る十一曲。
音楽と一緒に読む
収録曲・試聴
日本語編集版
アルバムの物語
短いCripple Creek Ferryで終わったあと、もう一度Tell Me Whyをかけてみる。『After the Gold Rush』では、この小さな折り返しが面白い。すぐに過ぎる歌も、重い電気楽器の演奏も、同じ大きさに整えられていない。長さと音量の違う十一曲をつないでいるのは、伴奏の中で細い輪郭を保つニール・ヤングの声だ。
一九七〇年にリプリーズから発表された作品で、ここでは原盤の十一曲を聴く。五十周年盤に追加されたWonderin’の二つの録音は別の資料として考えたい。制作にはヤングとデヴィッド・ブリッグス、ケンドル・ペイシャスが名を連ねる。クレイジー・ホースのメンバーに加え、ニルス・ロフグレンやスティーヴン・スティルスらの名もあるが、全員が全曲で演奏する固定編成ではない。
一曲の大きさを比べる
Till the Morning Comesのような短い曲を、長い曲の間を埋めるものとして通り過ぎないでほしい。少しの時間で場面が切り替わるからこそ、次に広がる歌の空間も違って感じられる。最後のCripple Creek Ferryも、大きな結論を掲げるより、歌のある場所を少しだけ見せて去っていくようだ。盤全体を聴くときには、どの曲が長く感じられ、どの曲をもう少し聴きたくなるか、自分の時間の感覚にも注意してみよう。
他人の歌が近く聞こえるとき
Oh, Lonesome Meの作者はドン・ギブソンである。この一曲がヤングの自作曲に混じっていることは、親密な歌声と本人の実生活を直結させないための手掛かりになる。そこからDon’t Let It Bring You Down、Birdsへ進むと、近さにもいくつかの形があることが分かる。言葉の場面を一つずつ伝記に置き換える必要はない。歌の語り手と歌手の間に少し距離を残したほうが、旋律や声の変化そのものを追いやすくなる。
声を基準に最初へ戻る
冒頭の四曲だけを続けて聴いても、音の景色はかなり変わる。Tell Me Whyのギター、タイトル曲のピアノ、Only Love Can Break Your Heartの親しみやすい旋律を経て、Southern Manではバンドの重みが前へ出る。静かな演奏だけを本音と考えず、大きな音の中に残る声の危うさにも耳を向けたい。声と伴奏がいつも同じ強さで動くわけではない。そのずれが、優しい歌にも落ち着かなさを残している。よく知った曲を選んで聴いたあと、曲順へ戻るだけでも印象は変わる。名曲の一覧としてではなく、異なる大きさの歌が隣り合う一枚として、今も聴き直す理由がある。
曲からたどるアルバム
最初の四曲を順番に聴き、声を囲む楽器の変化を追う。
After the Gold Rush
ピアノの音と音の間に、声がどれほど近く置かれているかを聴いてみよう。競い合う音が少ないので、句の終わりから次の句を待つ時間にも重さが生まれる。アルバムの二曲目として、冒頭のギターが作った歩みを別の時間へ移す曲でもある。題名や歌のイメージを一つの解答にまとめようとせず、場面が開いたまま旋律をたどってみたい。二度目は言葉ではなくピアノを追い、歌といつも同じ場所を強調しているか確かめよう。短い試聴ではつかみにくい間合いも、全曲を聴くと積み重なってくる。声だけでなく、その周りに残る静けさも曲の一部として受け止められる。
参考資料 · Apple Music: eleven-song programme and 1970 Reprise metadataDon't Let It Bring You Down
低いギターの動きと、その上を上がっていく声の間に耳を置きたい。題名から励ましを予想しても、音楽は単純に明るくなるわけではない。その緊張を解決しようとせず、繰り返される歌の形が周囲の景色をどう変えるか聴いてみよう。一度は声の上昇を、次は低い場所に残るギターを追うと、違う向きの動きが同時に働いていると分かる。原盤ではOh, Lonesome Meの後、Birdsの前にある。三曲を続ければ、親密さにも異なる形があることを比較できる。語り手を歌手本人と同一視しなくても、近い声と重い響きの関係だけで十分に心を引き寄せられる。
参考資料 · Apple Music: eleven-song programme and 1970 Reprise metadata
次に聴く一枚
声の周囲の余白を、ニック・ドレイクのfolk-17『Five Leaves Left』と比べてみたい。
Five Leaves Left ↗参考資料と編集について
日本語の読者に向けて独立して編集した記事です。作品の事実関係は下記の資料を参照し、聴きどころは編集上の解釈として記しています。AIによる編集・検査を実施しており、第三者の読者による実査ではありません。