ヒップホップ / 黎明期とオールドスクール · 1986
Planet Rock: The Album
Afrika Bambaataa & Soulsonic Force
この一枚を聴く理由
電子ドラムの反復と、複数の声が交わす呼びかけ。その間に生まれる動きを追うと、ラップとダンス音楽の接点が見えてきます。
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収録曲・試聴
日本語編集版
アルバムの物語
まず歌詞の意味より、声が入ってくる位置を聴いてみたい。低い電子ドラムが同じ形を刻んでいても、短い掛け声が加わると、その形が急に違って感じられる。「Planet Rock」の面白さは、機械の規則性を人間が壊すという単純な対立には収まらない。規則があるからこそ、声が作る隙間や勢いがはっきり浮かぶ。早口の技術に詳しくなくても、そこから十分に楽しめる。
本作の発表年は1986年だが、収められた音楽のすべてがその年に生まれたわけではない。1982年の表題シングルなど、先行する録音をまとめたアルバムである。ここで案内するのはTommy Boyの全7曲の配信版。「Renegades of Funk」にはLatin Rascalsのリミックスという表記がある。同名シングルや後年のリミックス集と取り違えず、曲順と版の名称を確かめてほしい。
反復の上に置かれる声
Arthur Bakerは後年のRed Bull Music Academyの講演で、Kraftwerkを参照し、John Robieと電子音を中心とした伴奏を組み立てた経緯を語っている。元のレコードをそのまま流したという説明では、作業の違いが見えなくなる。演奏し直した旋律や打ち込んだリズムに、ラップの居場所を作る。その結果を、声のない部分と声が戻る部分で比べてみよう。ドラム・マシンとは設定したリズムを反復する電子楽器だが、その上での人の入り方まで一つに決まるわけではない。
有名曲の先へ耳を進める
冒頭の長い曲では、同じリズムに留まる時間そのものが聴きどころになる。「Looking for the Perfect Beat」の細かな音の動きから、「Renegades of Funk」の歴史や政治を含む呼びかけへ、焦点は移っていく。後半の「Frantic Situation」やMelle Mel参加の「Who You Funkin’ with?」も、声とリズムの関係を別の角度から示す。最初の旋律の再登場だけを待たず、それぞれがどのように聴き手へ呼びかけるかを追えば、選集としての幅が分かる。
発表時の数字と後年の評価
Official Chartsに記録された表題曲の英国シングル最高位は、1982年の53位。1986年のアルバムの成績ではない。一方、XXLの2014年の記事は、後の時代から初期ヒップホップの遺産を振り返るものだ。その二つを区別しておくと、歴史的な名盤という言葉に聴き方を縛られずに済む。今日の入口は、長い反復の中で声が現れたり引いたりする瞬間でいい。物語を伝える以外にも、ラップにはその場の身体を一緒に動かす働きがあることを感じられる。
曲からたどるアルバム
最初の2曲では、ドラムの反復を目印にして、周囲の声や効果音が出入りする箇所を追ってみましょう。
Planet Rock (Original 12" Version)
よく知られたシンセサイザーの旋律から少し耳を離し、声のやり取りを追ってみよう。短い呼びかけは説明の文章というより、リズムに加わる新たな打点としても働く。Bakerが回想するKraftwerkとのつながりは制作を知る手掛かりだが、参照元を知るだけで聴き終えるのは惜しい。声が引いたときにも伴奏が緊張を保つか、戻ってきた声がどの隙間を選ぶかを確かめたい。機械の反復が背景ではなく、曲を動かす主役にもなる。配信のOriginal 12" Versionという名称だけで、すべての初期アナログ盤と収録時間まで同一だとは判断できない。
参考資料 · Arthur Baker: Key Tracks, 2007 lecture excerpt published by Red Bull Music Academy in 2013Looking for the Perfect Beat (Original 12" Version)
太いドラムだけを探すと、この曲の細かな動きを逃してしまう。短い電子音と声の断片が、中心の拍の周囲にどう置かれているかを聴きたい。Trouser PressのIra Robbinsも、効果音やミックスの込み入った動きに注目している。その評価は結論ではなく、自分で確認するための入口になる。1回目はドラムを、次は声を打楽器のように追ってみよう。同じ呼びかけが戻るたび、その周りまで同じに感じるだろうか。長い曲だからこそ、小さな強調点の移動がよく分かる。言葉の数や速さだけでは測れない、配置による忙しさを楽しめる。
参考資料 · Ira Robbins: Afrika Bambaataa & the Jazzy 5, Trouser Press retrospective
次に聴く一枚
Run-D.M.C.のRaising Hellへ進むと、集団の声の力が、より短く硬質な曲の中でどう働くか比較できます。
Raising Hell ↗参考資料と編集について
日本語の読者に向けて独立して編集した記事です。作品の事実関係は下記の資料を参照し、聴きどころは編集上の解釈として記しています。AIによる編集・検査を実施しており、第三者の読者による実査ではありません。
- Apple Music / Tommy Boy: Planet Rock: The Album, seven-track digital edition · music.apple.com
- Arthur Baker: Key Tracks, 2007 lecture excerpt published by Red Bull Music Academy in 2013 · daily.redbullmusicacademy.com
- Ira Robbins: Afrika Bambaataa & the Jazzy 5, Trouser Press retrospective · trouserpress.com
- Official Charts: Planet Rock, original UK singles chart run · www.officialcharts.com
- XXL: Planet Rock: The Album, retrospective by B. J. Steiner, 2014 · www.xxlmag.com