
ヒップホップ / 黎明期とオールドスクール · 1986
Raising Hell
Run-D.M.C.
この一枚を聴く理由
有名なロックとの共演だけでなく、二人の声が交代する速さにも耳を。会話を追うように楽しめるアルバムです。
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収録曲・試聴
日本語編集版
アルバムの物語
「Peter Piper」では、一人の声が終わるところへもう一人が入る瞬間を追ってみてください。英語を全部聞き取れなくても、言葉を受け取り、一緒に強調する動きは感じられます。背景の繰り返しをしばらく聴いてから声に注意を戻すと、同じリズムの上で言葉の長さが変わっていきます。一人の語り手が長く話すラップとは違う面白さです。曲を覚える前から、会話の勢いに乗って聴けます。途中から聴いて、気になった曲へ戻る方法でも十分楽しめます。
1986年発表の三作目です。ここで案内する配信版は「Proud to Be Black」で終わる全12曲。別に出ている17曲の拡張版とは区別しています。追加音源もあとで楽しめますが、最初は短い曲と長い曲が隣り合う元の流れをたどると、入りやすいでしょう。有名な一曲から全体の音を予想するより、曲ごとに何が前へ出て、何が引いていくのかを聴いてみてください。
知っているギターから入ってもよい
エアロスミスと共演した「Walk This Way」を知っているなら、そこから始めても構いません。ただ、その前の「My Adidas」と次の「Is It Live」も一緒に聴くと、ギターの存在感が変わっても声が音楽を進める役割は続くことが分かります。ロックとラップの境界を先に決める必要はありません。ギターに向いていた耳が、いつ言葉の刻みへ戻るか。その小さな移動を楽しむのも、この盤の聴き方です。
音の少ないところにも勢いがある
「Perfection」や「Hit It Run」では、声と声の間に残る隙間を聴いてみましょう。音をたくさん重ねなくても、次の声が入る瞬間を大きく感じさせることはできます。小さめの音量でも違いを追えますし、最初から誰がどの言葉を担当するか当てなくても大丈夫です。繰り返すうち、二人が一緒に力を込める場所が耳に残ります。そこを見つけたら、その直前にどれだけ空間があるかへ注意を移してみてください。
成功の記録と自分の好みを分ける
米国議会図書館に掲載されたビル・アドラーの後年の文章は、「Walk This Way」の米国ポップ・チャート最高4位を紹介しています。これは当時の具体的な反応であって、全曲への一致した評価ではありません。アルバムが2017年に保存対象へ選ばれたことも、発売時とは別の時点の評価です。そうした歴史を知っていても、短い掛け合いのほうが好きになるかもしれません。有名な曲をいちばん好きになる義務はないのです。耳に残った声のやり取りへ戻ると、自分に合う入り口が見つかります。
曲からたどるアルバム
Peter Piperの声の交代を聴き、Walk This Way、Perfectionへ進んでみましょう。
Peter Piper
背景の繰り返しを足場にして、二人のラッパーが声を渡す瞬間を追ってみてください。一人で話す部分と、一緒に強調する部分では働きが違います。Appleのアルバム紹介もこの掛け合いに注目しています。歴史的な順位を覚えるより、まず交代する動きを感じるほうが気軽な入り口でしょう。反復が単調に感じられないなら、次の声を待つ期待が生まれているのかもしれません。忙しく聴こえたら、背景の音を一つ選ぶだけでも構いません。英語のすべてを解釈しなくても楽しめます。二人が同時に強く言う場所を見つけ、次にはその直前の短い隙間へ耳を向けてみましょう。
参考資料 · Apple Music: original twelve-track Raising Hell programmeWalk This Way (feat. Aerosmith)
ギターに親しみがある人は、その響きを入り口にしてみてください。ラップから歌へ替わると、同じ伴奏の印象も変わります。アドラーの後年の文章は、エアロスミスとの共演を米国ポップ・チャート4位という当時の結果とともに紹介しています。ただ、成功したからといってロックとヒップホップの違いが消えたわけではありません。発声の対照も魅力の一部です。サビの直前の最後の言葉と、次に入る声の最初を続けて聴いてみましょう。速さや重さなど、自分に分かりやすい変化を追えば十分です。そのあと「Is It Live」へ進むと、この共演が全12曲の一場面でもあると感じられます。
参考資料 · Bill Adler, Library of Congress guest essay: retrospective on Raising Hell
次に聴く一枚
二年前の《Run-D.M.C.》へ戻り、同じ声がもっと簡潔な伴奏でどう聴こえるか比べてみてください。
Run-D.M.C. ↗参考資料と編集について
日本語の読者に向けて独立して編集した記事です。作品の事実関係は下記の資料を参照し、聴きどころは編集上の解釈として記しています。AIによる編集・検査を実施しており、第三者の読者による実査ではありません。