ジャズ / 初期ジャズとニューオーリンズ · 1929–43
ザ・ヴェリー・ベスト・オブ・ファッツ・ウォーラー
ファッツ・ウォーラー
The Very Best of Fats Waller · Fats Waller
この一枚を聴く理由
古いジャズに、堅い顔は必要ありません。まず好きな一曲を見つけ、次にピアノへ耳を向ける。その往復が楽しい選集です。
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収録曲・試聴
日本語編集版
アルバムの物語
ファッツ・ウォーラーを聴く入口は、演奏史の知識でなくてもかまいません。「Handful of Keys」という題名に誘われて、まず鍵盤の動きに注意を向けてみましょう。歌い手としての親しみやすさから入ってもよいし、ピアノへの興味から入ってもよい。面白さに引かれることと、演奏を丁寧に聴くことは両立します。重要な音楽だからと身構えるより、もう一度聴きたい瞬間が一つ見つかるかどうか。それを最初の目印にすると、この選集との距離が縮まります。
リンク先は、Apple Musicで2000年9月12日発売と表示されるBMGの20曲入り編集盤です。ページの1929–43という年代は、この曲順のアルバムが当時発売されたという意味ではありません。後年まとめられた入口なので、全曲を一続きの物語として受け取らず、気になる曲から聴いて大丈夫です。「Honeysuckle Rose」が二度出てくることにも注目してください。同じ曲名でも、作品と個々の録音は分けて考える必要があります。
低い音の歩幅を探す
ストライドは、左手が低いベース音と中音域の和音を行き来する動きに由来する呼び名です。専門用語として覚える前に、低い方で続く足取りを探してみましょう。高い方の動きに気を取られても、一定の拍を感じられるでしょうか。和音の名前や指の使い方を当てる必要はありません。一度は上の音、次は下の音に耳を向けるだけでも、同じ演奏への注意の置き方が変わります。両方が一緒に聞こえたとき、自分の体がどう動くかも手がかりになります。
曲の人気と演奏への評価
「Ain’t Misbehavin’」は1929年の舞台《Hot Chocolates》に結びつく曲です。議会図書館の解説では、複数の録音による初期の人気と、独奏録音の後世における意味が区別されています。有名な曲だからといって、当時の人が同じ演奏を同じ理由で好んだとは限りません。この選集でも、まず覚えやすい旋律に引かれ、次に鍵盤へ注意を移してみてください。歌として親しんだ曲が、演奏する人を知る入口になる。その順番でもよいのです。評価の歴史を一つの物語にまとめず、自分の聴き方にも変化する余地を残しておきましょう。
完走より、二曲との付き合い
最初は「Handful of Keys」と「Ain’t Misbehavin’」だけでも十分です。一曲のあとで少し間を置き、どんな短い形が頭に残ったか確かめてみてください。古い録音の質感になじむには時間がかかる場合もあります。大きな音で細部を取り出そうとせず、落ち着いて聴ける音量から始めましょう。二十曲を聴き終えたという達成感より、自分から戻りたくなる一曲を持つこと。その一曲があれば、次に別の題名を選ぶときも、ただの歴史資料ではなく、自分の聴く音楽として接することができます。
曲からたどるアルバム
「Handful of Keys」から「Ain’t Misbehavin’」へ。鍵盤の動きを追う耳と、覚えやすい旋律を待つ耳を切り替えてみましょう。
Ain’t Misbehavin’
よく知られた曲名ですが、一つの録音だけを指すわけではありません。米国議会図書館が2004年に保存対象へ選んだのは、ウォーラーによる1929年のピアノ独奏です。それだけで、この編集盤の一曲目が同じテイクだとは判断できません。その区別をつけたうえで、まず旋律が戻ってくる瞬間を待ってみてください。一度目よりすぐに分かる短い形があれば、歌詞を知らなくても親しみは生まれます。後世の評価を知ることと、自分の耳に残る場所を探すこと。その二つを並べると、「名曲だから聴く」という義務感が薄れます。別の演奏に出会った際も、優劣を急いで決めず、同じ曲がどう違う時間になるかを楽しめるでしょう。
参考資料 · Library of Congress: Stephen Budiansky on the 1929 Ain’t Misbehavin’ piano recordingHandful of Keys
この編集盤では三曲目。題名に促されて、歌より鍵盤へ関心を移す入口にしてみましょう。一度は高い方の動きを、次は低い方で拍を支える音を追う。全部を同時に聞き取らなくてもかまいません。親しみやすい芸人という印象だけでは捉えきれないピアニストへ、注意を向け直すための一曲です。ただし三曲目という位置は、現在の選集の構成であり、当時の舞台や原盤の順番を示すものではありません。順番に歴史的な物語を読み込むより、数分の間に繰り返し聴きたくなる動きがあるかどうかを試してみてください。技術の難しさを採点する必要はありません。小さな身振りが一つ記憶に残れば、次の鑑賞へつながります。
参考資料 · Apple Music / BMG: The Very Best of Fats Waller, 2000, 20 tracks
次に聴く一枚
続いてビックス・バイダーベックの選集へ。鍵盤から管楽器の受け渡しへ、耳の向きを変えられます。
Singin' the Blues ↗参考資料と編集について
日本語の読者に向けて独立して編集した記事です。作品の事実関係は下記の資料を参照し、聴きどころは編集上の解釈として記しています。AIによる編集・検査を実施しており、第三者の読者による実査ではありません。