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Kind of Blue

ジャズ / モード・ジャズ · 1959

Kind of Blue

Miles Davis

この一枚を聴く理由

静かな雰囲気の中で、トランペット、サックス、ピアノの話し方が違って聞こえる。ジャズの知識より、気になる音を追う楽しみから入れる一枚です。

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収録曲・試聴

日本語編集版

アルバムの物語

『Kind of Blue』は、静かに聴けるのに、人の違いがよく聞こえるアルバムです。短く言葉を置くようなトランペット、その先を語るサックス、間を受け止めるピアノ。演奏者が替わるたび、同じ場所で会話の調子が変わります。

マイルス・デイヴィスが1959年の二度の録音でまとめた、オリジナル盤の全5曲。ゆったりした印象から、一続きのムードとして楽しむこともできます。でも曲順に耳を向けると、広く旋律を伸ばす曲、ブルースの親しみやすい流れを持つ曲、短い時間に会話を凝縮した曲が並んでいます。どこから聴いても入りやすく、通して聴くと配分の違いがわかる。その両方を持った作品です。

音を急いで埋めなくてもいい

この作品でよく語られるモード奏法は、次々に替わる和音を追うよりも、比較的安定した土台の上で旋律を広げる方法、と捉えると入口になります。全曲が同じ仕組みという意味ではありません。ただ、一つのフレーズをどう終え、次の音までどれだけ待つかが聞こえやすい場面が多いのです。ビル・エヴァンスの当初のライナーノーツも、簡潔な枠組みが演奏を刺激することを説明しています。何も弾くことがない余白ではなく、何を弾くかを選べる余白。理論を覚える前に、その人ごとの間合いに耳を向けられます。

5曲の中で変わる、会話の密度

マイルスのトランペット、ジョン・コルトレーンのテナー、キャノンボール・アダレイのアルトは、音の詰め方も弾み方も違います。ピアノは主にエヴァンスが担当し、「Freddie Freeloader」ではウィントン・ケリーに交替します。開けた応答の「So What」からブルースへ進み、「Blue in Green」では短い時間に音楽が凝縮される。LPのB面は「All Blues」で再び広がり、「Flamenco Sketches」の長い呼吸へ向かいます。好みのソロを探すだけでなく、前の曲から受け取った気分が次の曲でどう変わるかを追うと、アルバムとしてのまとまりが身近になります。

ジャズの外へも届いた発想

評論家ロバート・パーマーの回想には、ギタリストのデュアン・オールマンが、自身の長い即興演奏に関わる音楽としてこの作品を挙げた話があります。簡潔な土台の上で旋律を広げる発想は、ジャズ以外の演奏者にも可能性を示したのでしょう。ただ、その影響を知ってからでないと楽しめない音楽ではありません。気に入った一節から入り、次に聴くときは背後のピアノやベースを追う。そんなふうに聴く相手を替えていくと、同じ録音の中にまだ会っていない演奏者がいると感じられます。「入門盤」で終わらず、何度も聴ける理由はそこにもあります。

曲からたどるアルバム

まずはテーマやリズムを一つ覚え、ソロで何が変わるかを聴いてみてください。理論の説明は、その変化を確かめるための補助として添えています。

  1. So What

    ベースの呼びかけに他の楽器が応えるテーマは、一度聴くと耳に残りやすいものです。その簡潔なやり取りから、ソロでは各人の話し方が広がっていきます。エヴァンスのライナーノーツは、この曲を二つの音の領域から成る設計として説明しています。複雑な和音の名前を追わなくても、土台が安定しているからこそ、短く区切る人と音をつなぐ人の違いが見えます。マイルスのあとでサックスが入ったとき、曲が速くなったのか、音の密度が増したのかを聴き比べてみてください。同じ拍子の中でも、誰が前に立つかで時間の感じ方が変わる。ジャズの即興を、人の個性として楽しめる場面です。

    参考資料 · 2009 Legacy Edition · Miles Davis official
  2. Blue in Green

    短い曲ですが、一つの声が離れたあとに別の声が残るような、濃い余韻があります。静かだから単純なのではなく、旋律と和音の動きが小さな空間に折り重なっています。エヴァンスの当初の解説が示すのは10小節の循環。よくある区切りを予想して聴くと、戻る場所が少しつかみにくく、その感覚も曲の表情になります。公式サイトの解説は、エヴァンスの作曲面での関与にも触れています。ここでは帰属を一言で片づけるより、ピアノと管楽器が一つの流れをどう受け渡すかを聴いてみたいところです。曲が短いぶん、もう一度再生して違う楽器を追うと、最初は背景だった音が近くに感じられます。

    参考資料 · Bill Evans original liner notes
  3. All Blues

    揺れ続けるリズムの上に、ゆっくりと人が集まって会話を始めるような曲です。エヴァンスのライナーノーツでは、6拍子の12小節ブルースとして説明されています。数字を数えなくても、繰り返す伴奏とソロの間にある、安定と変化の組み合わせは感じ取れます。原盤ではLPのB面を開く曲で、「Blue in Green」の凝縮した時間から、また広い場所へ出たように聞こえるのも魅力です。まず伴奏の揺れを体で覚え、そのままソロへ耳を移してみてください。下の流れは続いているのに、前に出る人の音使いで空気が変わります。派手な展開を待つより、同じ場所にいながら会話が進む楽しみを味わえる一曲です。

    参考資料 · Bill Evans original liner notes

次に聴く一枚

ここでコルトレーンの音が気になったら『A Love Supreme』へ。反復を足場に、カルテットが長い流れを作る様子を聴けます。

A Love Supreme ↗
参考資料と編集について

日本語の読者に向けて独立して編集した記事です。作品の事実関係は下記の資料を参照し、聴きどころは編集上の解釈として記しています。AIによる編集・検査を実施しており、第三者の読者による実査ではありません。