日本の音楽 / ニューミュージック・シティポップ・ソウル · 1983
TIMELY!!
杏里
この一枚を聴く理由
ダンス曲の勢いと別れの歌の切実さを、明瞭で伸びやかな声が一枚の流れに結びつける。
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収録曲・試聴
日本語編集版
アルバムの物語
杏里の『TIMELY!!』は、夏らしい題名や明るい音だけで語るには、感情の色が豊かな作品だ。1983年12月発表のアルバムは「CAT’S EYE」のニュー・テイクから始まり、「WINDY SUMMER」「STAY BY ME」へ一気に進む。その勢いの中でも歌の輪郭は鮮明だ。後半へ向かうと、雨、孤独、そしておやすみの挨拶が、最初の開放感に別の表情を加えていく。
有名な曲だけを取り出す場合と、曲順で聴く場合では印象が変わる。冒頭三曲の後には「A HOPE FROM SAD STREET」と「YOU ARE NOT ALONE」が置かれ、六曲目の「悲しみがとまらない」が再び流れを押し出す。原作は「GOOD-NIGHT FOR YOU」で幕を閉じる。すべてを一枚の南国の絵葉書として見るより、曲ごとに異なる相手との距離をたどると、このアルバムの構成がよく見える。曲間の変化を追うと、勢いを受け渡す場所と、歌の余韻を残す場所が区別できる。知っている曲を元の位置へ戻すことにも、新しい発見がある。
一人で全部を書かない制作
角松敏生はJASRACのインタビューで、「CAT’S EYE」に続く曲を作る際、林哲司と康珍化に具体的な方向を伝えて依頼したと振り返っている。本人が語るモータウン風の構想は、「悲しみがとまらない」の進む力と悲しさが共存する理由を考える手がかりになる。ただし特定曲の借用を示す説明ではない。制作をまとめる仕事と、作詞、作曲の担当を区別すると、共同作業の姿が明確になる。
明瞭な声の中にある違い
「WINDY SUMMER」の伸びやかさに対し、「STAY BY ME」は短い呼びかけを強く印象づける。杏里の声は、その違いの中でも一貫して歌の中心にある。音を出し始める瞬間と長く伸ばす母音がはっきりしているため、細かな伴奏があっても旋律を見失いにくい。初めは歌を追い、次にはベースの動きや短い楽器の返事へ耳を向けられる。聴きやすさは、全曲が同じ表情であることを意味しない。
本来の終曲と追加された夏
今回の配信版では、原作十曲の後に「Remember Summer Days」が加わる。「GOOD-NIGHT FOR YOU」の別れの挨拶をいったん受け止めてから、追加曲を別の章として聴いてみたい。夏へ戻る題名が最後にあるからといって、最初からそこへ向かう作品だったわけではない。強い導入、中盤の心情の変化、最後の挨拶という道筋を追えば、二つのヒット曲だけでは分からない一枚全体の輪郭が浮かぶ。
曲からたどるアルバム
最初の三曲を続けて聴き、六曲目と比較してから、原作の終曲「GOOD-NIGHT FOR YOU」まで進もう。
WINDY SUMMER
「CAT’S EYE」の次に置かれ、アルバムの勢いをもう一度押し広げる曲だ。角松が作詞、作曲、編曲を担当しているが、開放感を身近にするのは杏里の歌い方でもある。長く伸びる声の周囲で、短い楽器の音が次の句を準備する。その長さの違いに注目してみよう。最初はサビの明るさを楽しみ、二度目には声の前後に置かれる細かな音を探すと、伴奏が単なる背景ではなくなる。続く「STAY BY ME」まで聴けば、広々とした雰囲気が、より直接的な呼びかけへ変わるのも分かる。冒頭の明るい三曲にも、それぞれ異なる相手への向き合い方がある。題名の夏だけで聴き方を限定しなくてよい。
参考資料 · Kioku no Kiroku Library — Timely!! song credits悲しみがとまらない I CAN’T STOP THE LONELINESS
悲しい題名と、先へ進む力のある編曲が同じ曲の中で出会う。角松が語るモータウン風の構想は、その組み合わせを考える手がかりだ。林哲司の旋律と康珍化の詞を、杏里は曖昧な嘆きにせず、明瞭な言葉として届ける。伴奏が明るく動くからといって、歌の感情まで軽いわけではない。題名が戻る瞬間を聴き、その直前の旋律がどのように緊張を準備するかを比べてみよう。大声だけで切迫感を作るのではなく、はっきりした訴えが繰り返し残る。原作では六曲目に置かれ、「YOU ARE NOT ALONE」の後で流れを改めて動かす。その位置へ戻すと、単独のヒット曲とは別の役割が聞こえてくる。
参考資料 · JASRAC — Toshiki Kadomatsu discusses producing Anri
次に聴く一枚
大滝詠一『A LONG VACATION』と比べると、明るい休暇のイメージに距離や喪失を含ませる歌の違いが見えてくる。
A LONG VACATION ↗参考資料と編集について
日本語の読者に向けて独立して編集した記事です。作品の事実関係は下記の資料を参照し、聴きどころは編集上の解釈として記しています。AIによる編集・検査を実施しており、第三者の読者による実査ではありません。