日本の音楽 / 電子音楽・テクノポップ · 2001
LOVEBEAT
砂原良徳
この一枚を聴く理由
音を絞る判断を、曲順と長い呼吸に結びつけた電子音楽。
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収録曲・試聴
日本語編集版
アルバムの物語
『LOVEBEAT』は、少ない音であることと、小さな音楽であることを同一視しない作品だ。
電気グルーヴを離れた砂原良徳が2001年に発表したソロ作。脱退後初のアルバムだが、ソロ・デビューではない。すでに作品を重ねていた音楽家が、自分の活動の軸を組み直した一枚として考えたい。全10曲の題名には、大地、均衡、出入り、螺旋、反響、太陽、重力といった運動を想像させる言葉が並ぶ。ただし、それらを音で描いた物語があると決める必要はない。抽象的な名前は、聴く側が音の形を考えるための余地にもなる。
知識の量とは別の入口
砂原は後年、引用の面白さを知る人だけに向けた音楽から離れ、単純に楽しめるものを望んだと語っている。その言葉を、細部に注意しなくてもよいという意味に受け取るのは早い。重なる音が減れば、それぞれの結びつきはむしろ目立つ。リズムと旋律を別々の役割に固定せず、ひとつのまとまりとして考えてみたい。制作の複雑さを聴き手に予習させないことと、作曲自体が単純なことは異なる。音を絞る判断にも、何を残すかという積極的な選択がある。
四曲目に置かれた名前
EARTH BEAT、BALANCE、IN AND OUTを経て、四曲目で表題曲に着く。アルバム名を最初に提示するのではなく、その前に三つの独立した曲を置いた構成だ。約7分26秒のLOVEBEATの後にはSPIRAL NEVER BEFORE、さらに約3分13秒のECHO ENDLESS ECHOが続く。収録時間からテンポを推測することはできないが、一曲に滞在する時間の変化は確かにある。どこを抜き出しても同じ雰囲気になる背景音として扱うより、この長短の配置を手がかりに全体を捉える方が具体的だ。
終わりに確保された時間
最後のBRIGHT BEATとTHE CENTER OF GRAVITYは、ともに7分を超える。表題曲の後は次第に短くなる、という単純な形にはなっていない。明るさの名から重力の名へ移ることをどう感じるかは聴き手に委ねられるが、終盤に十分な時間を配した事実は共有できる。短い挨拶のような終曲ではなく、最後にも一曲として向き合う余地があるのだ。全曲をたどってから冒頭へ戻ると、最初の三曲を表題曲までの助走とだけ考える必要もなくなる。制限された材料を使っても、一枚の中には異なる大きさの場所を作れる。そこに本作の構成の面白さがある。表題曲だけを先に選んだ場合にも、最後は曲順に戻り、前後の関係を確かめる聴き方ができる。
曲からたどるアルバム
四曲目の表題曲と、最後に続く二つの長い曲を比べたい。
LOVEBEAT
アルバムと同じ名前を持つが、冒頭には置かれていない。EARTH BEAT、BALANCE、IN AND OUTに続く四曲目で、選択版では約7分26秒。そこまでの三曲を、代表曲を待つためだけの前置きにしないことが大切だ。愛という語から特定の恋愛の筋書きを作る必要もない。音の組み合わせが一曲の時間をどう成立させるかに関心を向けたい。次のSPIRAL NEVER BEFORE、短いECHO ENDLESS ECHOへ進むと、表題曲が一枚を独占しない配置も見えてくる。ここで選ぶのは元の10曲構成のスタジオ版であり、2021 DUB Mixや2009年の公演版ではない。
参考資料 · Apple Music: standard LOVEBEATTHE CENTER OF GRAVITY
約7分43秒の終曲。その前のBRIGHT BEATも約7分30秒あるため、最後の二曲に相当な時間が割り当てられている。重力という名前を、特定の効果音や科学的な仕掛けの証拠と考える必要はない。まずは、終わりにも十分な長さの一曲を置いた判断を見たい。短く閉じる代わりに、ここでも曲として向き合う場所が残されている。表題曲と比べる際は、どちらがより代表的かを決める前に、四曲目と十曲目という位置の違いを意識するとよい。中ほどの短いECHO ENDLESS ECHOも思い出せば、全体が均等な長さの単位でできているわけではないと分かる。
参考資料 · Apple Music: standard LOVEBEAT
次に聴く一枚
電気グルーヴの『A』へ戻り、砂原が参加したグループ作品と、その後のソロの組み立てを比べたい。
A (Ace) ↗参考資料と編集について
日本語の読者に向けて独立して編集した記事です。作品の事実関係は下記の資料を参照し、聴きどころは編集上の解釈として記しています。AIによる編集・検査を実施しており、第三者の読者による実査ではありません。
- Sony Music original KSC2-387 · www.sonymusic.co.jp
- CDJournal original release and programme · artist.cdjournal.com
- Mikiki: Yoshinori Sunahara interviewed by Dai Onojima, 2021 · mikiki.tokyo.jp
- Sony: 2021 remix and remaster announcement · www.sonymusic.co.jp
- Apple Music: standard LOVEBEAT · music.apple.com