日本の音楽 / ロックバンド・パンク・ヴィジュアル系 · 1985
KAMAKURA
サザンオールスターズ
この一枚を聴く理由
奇妙な打楽器の質感と原由子の歌を、二枚組の大きな器が同じ重さで受け止める。
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収録曲・試聴
日本語編集版
アルバムの物語
『KAMAKURA』は、最初のドラムの音からバンドの輪郭を揺らす。「Computer Children」の硬く不思議な感触を通り抜けると、滑らかな歌や芝居がかった場面が次々に現れる。二枚分を同じ色に塗るのでなく、異なる音楽にそれぞれの部屋を与えるようなアルバムだ。
1985年9月14日に発表された全二十曲の二枚組。それぞれ十曲ずつのまとまりを持ち、一枚目は原由子が歌う「鎌倉物語」で閉じ、二枚目は「顔」から始まる。配信で連続して並べても、この境目には耳を留めたい。長さを一つの大きな物語にまとめるのではなく、歌の主人公や音の手触りが替わる機会を何度も設けている。
音色そのものが入口になる
制作に参加した藤井丈司は、後年のインタビューで「Computer Children」の冒頭のドラムをフェアライトによるものと説明した。録音した音を呼び出して扱う機械の性格が、曲の第一印象を作っている。すべての音を自然で分厚く整えるのでなく、癖のある響きも前へ出すという選択だ。歌が本格的に動き出す前から耳の焦点が変わる。その感触を覚えて後続の曲へ進むと、電子音はバンドを取り替えるものというより、使える表情を増やすものとして聞こえる。
一枚目を閉じる声
「メロディ(Melody)」「吉田拓郎の唄」を経て「鎌倉物語」に着くと、第一のまとまりは別の声で閉じられる。作詞作曲は桑田佳祐だが、この場面の表情を担うのは原の歌唱である。目立つ音色で幕を開けた作品が、声の存在感で一つの区切りに達する道筋を聴いてみよう。六分ほどの冒頭曲と四分ほどのこの歌は、同じ方法で聴き手を引き込むわけではない。凝った制作と親密な歌が、別々の魅力を保って同居している。 鍵盤の奏者でもある原が、歌い手として区切りを作る位置が印象的だ。
再出発できる二枚組
二枚目には「Bye Bye My Love」、長く展開する「Please」、後半の「怪物君の空」がある。終盤には題名にメリーゴーランドを含む二曲も、ほかの歌を挟んで置かれている。ひたすら大きな結末へ向かうのでなく、横道を残した構成だ。初めは気になる曲から入ってもよいが、慣れたら一枚目の終わりと二枚目の始まりを続けて聴きたい。大作の個性は曲数だけにあるのではない。異なる歌い手と作り方が隣り合い、それぞれの長所を消さずにいられる余地を作ったところにある。最初の音の驚きも、最後まで同じ強さで繰り返す必要はない。次の曲で別の楽しさを見つけられることが、長い作品を身近にしている。
曲からたどるアルバム
Computer Childrenの加工された打楽器から、一枚目を閉じる鎌倉物語の歌唱へ進んでみよう。
Computer Children
最初の打楽器は、拍子を数える前に音色そのものへ注意を向けさせる。藤井丈司の直接の説明によれば、そのドラムはフェアライトによるもの。公式の編曲欄にもバンドと藤井が並ぶ。ここで選んだのは約六分十二秒の2024年リマスターだ。生のドラムをどれだけ自然に再現したかだけでなく、角のある感触が声や周囲の音とどんな対照を作るかを追いたい。長い冒頭曲の入口に置かれた音が、その先を聴くときの基準にもなる。短い効果音の珍しさだけで終わらないのが面白い。次の曲へ進む際にもこの手触りを覚えていると、アルバムが選べる表情の幅がよりはっきりする。
参考資料 · Rock oN — Takeshi Fujii direct interview, August 2019鎌倉物語
一枚目の十曲目を原由子の歌が締めくくる。作詞作曲は桑田佳祐、弦編曲は大谷幸と記され、歌う人と曲を作る人の役割を分けて考えると協働の形が見える。選曲は約三分五十六秒の2024年リマスター。声を伴奏の上の飾りでなく、この場面を導く中心として聴いてみよう。前の「吉田拓郎の唄」から移り、次のまとまりを開く「顔」へ渡す位置にも意味がある。大げさな終結でなく別の歌い手の口調によって一区切りを作る。そのため、単独の親しみやすい歌として楽しむときとは違う余韻も生まれる。周囲の曲を含めることで、親密さが長いアルバムの構造にも働く。
参考資料 · Southern All Stars official — Kamakura Monogatari credits
次に聴く一枚
電気グルーヴのAへ進み、バンドの選択肢としての電子音と、曲を組み立てる中心的な言語としての電子音を比べたい。
A (Ace) ↗参考資料と編集について
日本語の読者に向けて独立して編集した記事です。作品の事実関係は下記の資料を参照し、聴きどころは編集上の解釈として記しています。AIによる編集・検査を実施しており、第三者の読者による実査ではありません。
- Southern All Stars official — KAMAKURA, original twenty-track sequence · southernallstars.jp
- Rock oN — Takeshi Fujii direct interview, August 2019 · www.miroc.co.jp
- Southern All Stars official — Computer Children credits · southernallstars.jp
- Southern All Stars official — Kamakura Monogatari credits · southernallstars.jp
- Official label link — KAMAKURA 2024 Remaster · taishita.lnk.to
- Apple Music Japan — KAMAKURA 2024 Remaster · music.apple.com