ポップ / シンガーソングライター・ポップ · 1971
Tapestry
Carole King
この一枚を聴く理由
近くに感じる歌声と、役割を変えるピアノが、熟練したポップソングを一枚の流れへつなぐ。
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収録曲・試聴
日本語編集版
アルバムの物語
冒頭のピアノは穏やかな背景にとどまらず、音楽を前へ押す。ところが次の曲では、同じ楽器が広い余白を作る。キャロル・キングのTapestryは、声の親しみやすさを保ちながら、曲ごとに言葉の速度と伴奏の重さを変えるアルバムだ。
1971年の本作を、作曲を始めたばかりの歌手のデビューと考えてはいけない。キングは他の歌手への楽曲提供ですでに経験を積んでいた。ルー・アドラーが制作し、A&Mスタジオで録音された音楽には、ピアノと独唱だけでなく、ギター、ベース、ドラム、複数の声が参加する。親密さとは、演奏者が少ないという意味よりも、中心にある歌声までの距離が近いという意味に捉えたい。何気なく聞こえる歌の運びにも、曲を組み立ててきた経験が働いている。
近さを作る演奏
アドラーは2015年の米国議会図書館のインタビューで、キングのピアノと歌を近くで聴くような印象を制作の方向にしたと回想している。ただし、それは編曲や装飾が存在しないということではない。一度は歌だけを追い、次には声が休むときの楽器へ注意を移してみよう。短い応答や和音の移り変わりが、言葉と言葉の間をつないでいる。伴奏の厚さだけでなく、どこで前に出て、いつ引くかが大切だ。自然に聞こえるための役割分担がある。
曲順が変える感情の重み
I Feel the Earth MoveからSo Far Awayへの移行は、聴き方のよい入口になる。リズムの押し出しが変わり、フレーズが長く呼吸しても、声の近さは失われない。後半にも同じ感情だけが続くわけではない。You’ve Got a Friendの落ち着きとSmackwater Jackの推進力を並べると、全編を温かな背景音楽としてまとめにくくなる。既に知られた歌も、今の声と隣の曲との関係で違って聞こえる。曲名の知名度より、その前後に何が置かれているかを確かめたい。 同じ声でも、曲順の中で担う役割は少しずつ変わっていく。
評価と現在の版を分ける
本作は1972年のグラミー賞で年間最優秀アルバムに選ばれ、2003年には米国の全米録音資料登録簿に加えられた。当時の賞と、後年の保存上の判断は別の時点の出来事だ。ここでは公式ディスコグラフィーと一致するオリジナルの12曲順を試聴の基準にする。別のライブ演奏や追加曲は混ぜない。配信商品の権利表示に複数の年があっても、各年に同じアルバムを新しく演奏したという意味にはならない。まずこのまとまった順序を聴けば、曲同士の温度差がわかりやすい。
曲からたどるアルバム
最初の二曲を続け、声の近さが保たれたままリズムの性格が変わるところを聴きたい。
I Feel the Earth Move
ピアノは歌の下に和音を置くだけでなく、打楽器のように音楽を前へ進める。まず反復する鍵盤の動きを追い、次は声がその上のどこに置かれるかを聴いてみよう。はっきりした拍と、語るように続く歌は、同じ形で動かなくても互いを押し出せる。バンドの勢いを楽しみつつ、最も大きな音ばかりを追わないことも大切だ。ピアノはその間も推進力を保っている。この入口を覚えて二曲目へ進めば、親密さが静かな音量だけで生まれるのではないとわかる。活気ある演奏でも声は近い。歌の興奮を実際の出来事の記録と決めず、声と鍵盤が作る身体の動きを味わいたい。
参考資料 · Carole King official: programme and creditsSo Far Away
冒頭曲のあとでは、ピアノの周りに残る空間が大きく感じられる。一つの歌のフレーズが終わったら、次の言葉を急がず、伴奏が何を残すかに耳を向けよう。その余白が、歌う人を遠くへ追いやることなく、感情の距離を伝える。単に遅い曲、悲しい曲と呼ぶだけでは捉えきれない部分だ。すぐそばにいるような声が、不在や隔たりを歌う。その二つが同時に存在するところを聴きたい。実在の誰に向けた告白かを推測する必要はない。単独で聴いたあと、I Feel the Earth Moveの次に戻してみよう。曲順によって静かな演奏の重みが変わることも確かめられる。
参考資料 · Carole King official: programme and credits
次に聴く一枚
ディオンヌ・ワーウィックのMake Way for Dionne Warwickへ進み、緻密なポップソングと別の歌声の関係を比べたい。
Make Way for Dionne Warwick ↗参考資料と編集について
日本語の読者に向けて独立して編集した記事です。作品の事実関係は下記の資料を参照し、聴きどころは編集上の解釈として記しています。AIによる編集・検査を実施しており、第三者の読者による実査ではありません。