ポップ / シンセポップとニューロマンティック · 1987
Music for the Masses
Depeche Mode
この一枚を聴く理由
揺るがない反復の中に、確信しきれない声の場所を残す電子ポップ。
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収録曲・試聴
日本語編集版
アルバムの物語
大きな音楽だからといって、その中の人が安心しているとは限らない。《Music for the Masses》は、覚えやすい音型と強い拍によって身体を前へ運びながら、声には別の迷いを残す。声の近さと伴奏の広がりを一緒に聴くと、この作品の規模は単なる音量ではないとわかる。大きな部屋の中で、小さな頼みごとが響いているような距離がある。
1987年の作品で、公式アーカイブでは英国と米国の発売日が分けて記録されている。参照するのはソニーの十トラック版だ。当時の拡張CDに付いた追加曲やリミックスは、中心となるアルバムの流れと区別する。最後の《Pimpf》の後の短い間奏には公式一覧で別の名前があるが、この配信では最後のファイル内に収まる。名前のある部分の数と、再生するトラック数は必ずしも一致しない。
反復の周囲が広がる
《Never Let Me Down Again》では、繰り返す音型を目印にして、その周囲がどう変わるかを追いたい。同じ形が戻っても、耳の受ける圧力は同じとは限らない。続く《The Things You Said》と比べれば、冒頭の大きさが全曲の決まりではないとわかる。小さな身振りがあるから、再び広がる瞬間もわかりやすい。曲の順番は、聴き手が感じる部屋の大きさを少しずつ変えていく。
一定の拍に違う表情を置く
《Behind the Wheel》では、拍を追う耳を残したまま、声と背景へ注意を移してみよう。動きを感じさせるのは速さだけではなく、同じ脈が続く中で変わる音の配置でもある。《Little 15》や《I Want You Now》と並べると、電子音は冷たいという説明では足りなくなる。大切なのは材料の名前より、声がどのくらい近く聞こえ、その周囲に何が残るかだ。音数だけで親密さを測らないようにしたい。
言葉が案内しない終わり
《Nothing》から《Pimpf》へ進むと、歌詞に導かれていた耳が音の形へ向き直る。最後の大きなサビで全体を片づけず、反復と短い終結部を聴き終えることにも意味がある。身体を安心させる拍と、安心しきれない声が同居するところに、今も聴く面白さがある。一度目は低い音の動きを、次は声の文末を追ってみたい。同じ録音でも注意の置き場所が変わると、巨大な一枚の壁に思えた音が異なる距離の集まりになる。最初の曲へ戻り、その頼みごとの響きが終曲の後でどう変わるかも確かめよう。音を増やす瞬間だけでなく、減らした場所にも一枚の設計が聞こえてくる。
曲からたどるアルバム
拍を保って聴きながら、声と背景の距離の変化を探す。
Never Let Me Down Again
冒頭の音型が戻るたびに、その周囲で何が変わったかを比べてみよう。中心の形は覚えやすくても、背景と声の占める広さは固定されていない。題名の頼みごとを単なる歓声と考えなければ、大きな響きにも依存や不安が残る。選曲はアルバム冒頭の版で、当時の拡張CD後半に入ったAggro Mixとは別だ。歌詞の意味を一つに決める前に、運んでいくような伴奏と、何かを求める声の関係を聴きたい。二度目には声の休むところで背景へ注意を向ける。歌手の音量だけでは説明できない大きさが、そこで生まれているかもしれない。反復と変化を同時に追う入口になる。
参考資料 · Depeche Mode official archives: original editions and bonus programmesBehind the Wheel
一定の脈を基準にして、文がその前へどんな長さで置かれるかを聴く。ソニー版の約五分十八秒の六曲目を選び、別のシングル・リミックスとは区別した。題名から移動を連想しても、速さだけを追わないほうが面白い。同じ拍を続ける中で、音の表情と声の距離が変わっていく。直前の《Little 15》から順に聴けば、空間が変わる感じもつかみやすい。声は動きを自分で支配しているのか、それとも誰かに任せているのか。解釈を急がず、リズムの確かさと文の響きの違いに耳を置こう。身体が前へ進む感覚と、気持ちの安心が必ずしも一緒ではないと気づける曲だ。
参考資料 · Depeche Mode official archives: original editions and bonus programmes
次に聴く一枚
《Violator》へ進み、反復する音型と余白の別の配分を比べたい。
Violator ↗参考資料と編集について
日本語の読者に向けて独立して編集した記事です。作品の事実関係は下記の資料を参照し、聴きどころは編集上の解釈として記しています。AIによる編集・検査を実施しており、第三者の読者による実査ではありません。