ポップ / アート・ポップ · 1985
ハウンズ・オブ・ラヴ
ケイト・ブッシュ
Hounds of Love · Kate Bush
この一枚を聴く理由
耳に残る一曲から、夜をたどる物語へ。力強いポップソングと小さな声の緊張が、違う速さで聴き手を引き込みます。
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収録曲・試聴
日本語編集版
アルバムの物語
「Running Up That Hill」を知っていれば、このアルバムの入口はもう見つかっています。ただ、あの推進力だけを期待すると、途中の静けさに驚くかもしれません。前半では拍を追いながら好きな曲を選び、後半では一人の声がどんな場所にいるのか気になってくる。同じ聴き方を最後まで続ける必要がないところに、一枚としての面白さがあります。
1985年発表、英国のアルバム・チャートで1位を記録した作品です。後年のドラマに発見されるまで無名だった、というわけではありません。元のLPでは表に5曲、裏に「The Ninth Wave」と題された7曲の連作が置かれました。配信では12曲が一列に見えますが、「Cloudbusting」と「And Dream of Sheep」の間で一息つくと、二つの部分の違いがつかみやすくなります。
動かない拍と、動いていく声
冒頭では繰り返すリズムが足場として残る一方、声は次第に切迫して聞こえます。一度は拍だけを、次には歌の一節が長くなるところを追ってみてください。表題曲や「The Big Sky」に移ると、同じ歌い手でも身体の動かし方が違うように感じられます。個性的な声という評価を先に覚えるより、そばで話すような近さと、声が重なって景色を広げる瞬間を見つけるほうが、自分の感想になっていきます。
昔のヒットと、新しい出会い
「Running Up That Hill」は1985年に英国3位、2022年にはドラマ《ストレンジャー・シングス》で使われたあと1位になりました。本人も公式サイトで新たな聴き手との出会いを喜んでいます。以前からの愛聴者の記憶と、映像で初めて知った人の感動は、どちらかだけのものにする必要はありません。画面の場面を思い浮かべてもよいし、アルバムの隣り合う曲から別の印象を受け取ってもよい。その両方が一曲に重なることもあります。
静かな場所から始まる後半
「And Dream of Sheep」では、前半の外へ向かう力が収まり、ピアノと声が近づきます。海で取り残された人物という背景を知ると、静けさが必ずしも安心ではないと感じられます。後の曲の変化も、物語の筋を正確に当てようとせず、夜の場面が移るように聴いてみる。声が一人だけに聞こえるところと、周りに別の気配が生まれるところを追うだけでも足場になります。長い物語を聴く気分でない日は、前半で止めて別の日に戻っても構いません。好きな曲の勢いと、小さな音に引き寄せられる感覚を別々に覚えておくと、次に通して聴いたときの切り替わりがよくわかります。
曲からたどるアルバム
最初の曲の繰り返す拍と、6曲目「And Dream of Sheep」のピアノと声を比べてみてください。前半と後半を別の日に聴いても、その対照は楽しめます。
Running Up That Hill (A Deal with God)
同じリズムが続くのに、声はだんだん強く何かを求めているように聞こえます。反復が感情を押し上げる足場になる曲です。相手と立場を交換できたら理解し合えるか、という問いも、身近な人とうまく話せなかった経験に重ねられます。英国で1985年に3位、2022年に1位という二つの記録は、同じ録音との異なる出会いを示しています。ドラマが生んだ新曲でも、昔の世代だけの思い出でもありません。映像の場面を覚えたまま聴いたあと、次は画面を閉じて拍と声だけを追ってみる。一つの場面を離れても残る切迫感が、どこから生まれるのかを感じやすくなります。
参考資料 · Official Charts: Running Up That Hill, 1985 and 2022And Dream of Sheep
近い声とピアノだけなら、穏やかな休息にも聞こえます。しかし海で取り残された人物の歌と知ると、眠ることと安心することは同じではなくなります。LP裏面の連作「The Ninth Wave」の入口なので、完結したバラードより、これから続く場面の始まりとして聴くと印象が変わります。後年、ブッシュは舞台企画に関連して水槽の中で歌う別の映像版を制作しましたが、1985年の録音方法と混同しないようにしたいところです。原盤では歌の一節のあとに残るピアノと間に耳を向けてみてください。大きな効果音がなくても、声の近くへ引き寄せられる、前半とは違った集中が生まれます。
参考資料 · Kate Bush: The Ninth Wave and the later And Dream of Sheep performance
次に聴く一枚
《パープル・レイン》では、すぐ耳をつかむ歌と、長く積み上がるドラマが別の方法で結びつきます。似た音を探すより、声が場面を導く力と演奏の規模の変化を比べてみてください。
Purple Rain ↗参考資料と編集について
日本語の読者に向けて独立して編集した記事です。作品の事実関係は下記の資料を参照し、聴きどころは編集上の解釈として記しています。AIによる編集・検査を実施しており、第三者の読者による実査ではありません。
- Official Charts: Hounds of Love, original 1985 chart run · www.officialcharts.com
- Official Charts: Running Up That Hill, 1985 and 2022 · www.officialcharts.com
- Kate Bush: The Ninth Wave and the later And Dream of Sheep performance · www.katebush.com
- Kate Bush: 2022 message to a new audience · www.katebush.com
- Kate Bush: current editions use the 2018 remaster · www.katebush.com