ジャズ / 初期ジャズとニューオーリンズ · 1994
The Best of Sidney Bechet
シドニー・ベシェ
The Best of Sidney Bechet · Sidney Bechet
この一枚を聴く理由
伸ばした一音の中にも動きがあります。ソプラノ・サックスとクラリネットの違いを、同じ奏者の語り口から聴いてみてください。
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収録曲・試聴
日本語編集版
アルバムの物語
「Summertime」の旋律を知っているなら、次の音を待つ代わりに、いま伸びている音へ耳を向けてみてください。ベシェの音は、止まっているようで動き続けます。歌声のように感じる人も、少し強すぎると感じる人もいるでしょう。どちらでもかまいません。よく知る旋律が、一人の話し方へと変わっていく。その変化を楽しむと、古い録音だからという距離が少し縮まります。好きになるために、最初から歴史的な評価へ賛成する必要はありません。
ここで案内するのは、1994年のブルーノートによる全18曲の編集盤です。一日のスタジオ録音や一回の公演を収めた作品ではありません。1994年は編集盤の発売年であり、全曲がその年に録音されたという意味ではありません。異なる録音を一つの曲順で聴くことで、奏者の特徴を比べやすくなります。ユニバーサルの曲別クレジットでは、「Summertime」はソプラノ・サックス、「Blue Horizon」はクラリネットと確認できます。同じ奏者でも、すべての曲が同じ楽器の音ではないことが、比較の入り口になります。
一音の長さから周りへ
最初と三番目の曲を行き来して、どちらの長い音が近く、あるいは柔らかく感じられるかを比べてみましょう。楽器の名前を当てる試験ではありません。旋律に慣れたら、それが休むところで周りの音を追ってみてください。ピアノや別の管楽器は、主役にならなくても流れを保っています。一人の演奏だけを追っていた耳が、複数の人のやり取りへ移ると、同じ録音でも別の部分が印象に残るはずです。
評価の場所と時期を分ける
ブルーノートの後年の紹介は、アメリカでの仕事と1949年のパリ公演以後の活動を分けて説明しています。現在のBestという題名を、当時どの国でも同じように支持されていた証拠と読むことはできません。また、この略歴だけで収録曲それぞれの初出時の反応までは分かりません。演奏家の生涯への評価と、いま流れている一曲の経験は別々に置いておけます。詳しい経歴を覚える前に、気になる音を見つけてもよいのです。
短い訪問を重ねる
「Muskrat Ramble」や「When the Saints Go Marching In」へ進むと、別の旋律によって周囲の動きが気になってくるかもしれません。18曲を一度に聴き終える必要はありません。覚えていた短い節に戻り、次はその後ろのリズムを追う、といった聴き方もできます。古い録音の質感に疲れたら、無理に音量を上げず、いったん休んでください。名演を確認したという実績より、もう一度聴きたい箇所が一つできるほうが、この編集盤との付き合いは自然に続くでしょう。
曲からたどるアルバム
まずSummertimeとBlue Horizonを比較。接続先は1994年の18曲編集盤で、一回の録音ではありません。
Summertime
公式の曲別クレジットでは、ベシェの楽器はソプラノ・サックスです。旋律を追ったあと、長く伸ばした音の揺れ方に注意してみてください。子守歌らしい穏やかさだけを期待しなくても、同じ曲が個人の話し方になる面白さがあります。ブルーノートの回想的な紹介は、この録音を経歴の重要な出来事として扱います。ただし、それを編集盤の全曲が当時同じ人気を得た証拠にはできません。旋律が少し休む間も伴奏は続きます。言葉がなくても、息を置く位置が文章の区切りのように感じられるかもしれません。ほかの演奏と比べるなら、速さだけでなく、一つの節をどう終えるかから聴いてみましょう。
参考資料 · Universal Music: 1994 compilation programme and instrument creditsBlue Horizon
こちらでクレジットされる楽器はクラリネットです。冒頭曲とは長い音の印象がどう違うか、まず比べてみてください。題名から想像する景色に合わせるより、耳に残った短い節を一つ選ぶほうが気軽です。接続先の1994年編集盤では三曲目なので、前の二曲を経て出会う場合と、ここから聴く場合では印象が変わるでしょう。それは編集盤の曲順が作る経験で、必ずしも録音当初の計画とは同じではありません。周囲の演奏が続く中で、一人の線がどのように耳を引くかを追ってみましょう。少し空いた場所が、次の音への期待を作ることもあります。
参考資料 · Universal Music: 1994 compilation programme and instrument credits
次に聴く一枚
次はファッツ・ウォーラーの編集盤へ。管楽器の長い音から、ピアノと声の短いやり取りへ焦点が移ります。
The Very Best of Fats Waller ↗参考資料と編集について
日本語の読者に向けて独立して編集した記事です。作品の事実関係は下記の資料を参照し、聴きどころは編集上の解釈として記しています。AIによる編集・検査を実施しており、第三者の読者による実査ではありません。