日本の音楽 / フォーク・シンガーソングライター · 1976
JAPANESE GIRL
矢野顕子
この一枚を聴く理由
声の曲がり方とピアノの打点が、バンドの拍を動かす。二つの録音環境を一人の呼吸でつなぐデビュー作。
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収録曲・試聴
日本語編集版
アルバムの物語
矢野顕子の声は、旋律をなぞるだけでは収まらない。母音を伸ばし、語尾を急に縮め、その横でピアノが別の角度から拍を打つ。『JAPANESE GIRL』では、異なる音楽の材料が集まっていること以上に、その材料が一人の呼吸へ変わる瞬間に耳が引かれる。声と伴奏が同じ方向へ進む時にも、動きの長さは必ずしも同じではない。
1976年7月25日発売のソロ・デビュー作。前半五曲はリトル・フィートが参加した米国録音、後半は日本の音楽家たちと作られた。この地理的な違いを、洋楽と日本の音楽という二つの箱にそのまま置き換える必要はない。どちらでも中心を動かすのは、矢野の発音とピアノの判断だ。馴染みのある拍の上で一音を長く留めたり、短く切ったりする。その小さな変化が、曲の表情を大きく変える。楽器が同じ拍を保つ間にも、声だけが違う速度で動くように感じられる。そのずれも合奏の一部になっている。
長く始め、短く曲がる
冒頭の「気球にのって」は、歌とバンドの関係を時間をかけて広げる。「クマ」「電話線」へ進むと、言葉と伴奏の間隔も変わっていく。短い「津軽ツアー」を経て「ふなまち唄 Part II」に至る前半は、一つの速さに留まらない。曲ごとに素材の出所を分類するより、一音節をどれほど長く歌うかを追ってみたい。身体がリズムに乗りながら、その輪郭を少し変えてしまうような瞬間が聴こえる。
別の旋律を自分の声へ
後半は「大いなる椎の木」から「へこりぷたぁ」「風太」へと進み、「丘を越えて」に出会う。島田芳文作詞、古賀政男作曲のこの歌は、矢野の自作曲ではない。他の人の旋律を受け取っても、自分の声の曲がり方を小さくしないところが面白い。最後に「ふなまち唄 Part I」を聴いてから前半のPart IIへ戻ると、番号と実際の曲順の違いも改めて意識される。同じ名前に頼らず、二つの場面がどう響くかを比べたい。
有名な共演者だけで説明しない
リトル・フィートの名前から聴き始めることはできても、それだけで作品を説明すると、矢野の時間感覚が脇へ追いやられる。題名を日本らしさの展示と読む必要もない。ピアノが短く打つ時に声が長く残る場所、伴奏が進む中で歌だけが留まる場所を探してみよう。異なる長さの音が同じ瞬間に出会う関係が、このアルバムの具体的な聴きどころだ。まず元の十曲を順に聴き、次には一曲の歌とピアノを別々に追うと、二つがどれほど自由に動いているかを感じられる。後年の弾き語りと比べる時にも、その違いを入口にしたい。
曲からたどるアルバム
「電話線」で声の長さとピアノの打点を交互に追い、「丘を越えて」で旋律を変える発音を聴こう。
電話線
三分に満たない長さの中で、声とピアノが何度も近づき、離れる。作詞・作曲とも矢野による曲で、言葉を発音する長さ自体がリズムの材料になる。まずは母音が残る場所と語尾が短く跳ねる場所を追い、次には同じ部分をピアノに集中して聴いてみよう。声と同時に力を入れる時も、別の場所から拍を突く時もある。速い動きを技巧の誇示としてだけ聴く必要はない。短い文と戻ってくる伴奏が次の瞬間へ運ぶ。米国録音の前半に属する三曲目で、配信版も同じ位置。後年の弾き語りとは、バンドが作る空間の違いから丁寧に聴き比べたい。語尾の余韻も手掛かりになる。
参考資料 · Sony official archive:1976date and songwriting credits丘を越えて
島田芳文の詞と古賀政男の旋律を、矢野が自分の声で受け取る。他人の曲だからといって、声の曲がり方を均してしまわない。まず旋律を追い、次には各フレーズへどう入るかを聴いてみよう。言葉の強調や長さが変わると、同じ旋律にも別の足取りが生まれる。全十曲の九曲目に置かれ、最後の「ふなまち唄 Part I」の前に異なる種類の親しみをもたらす。古い歌を新しくしたという説明だけで終えず、歌と伴奏の距離を具体的に追いたい。案内するのは本作のスタジオ録音であり、別のコンサートや後年の再録音で置き換えない。前後の曲も続けて聴きたい。
参考資料 · Sony official archive:1976date and songwriting credits
次に聴く一枚
井上陽水の『氷の世界』と並べ、母音と語尾がリズムを変える異なる方法に耳を向けたい。
Kori no Sekai ↗参考資料と編集について
日本語の読者に向けて独立して編集した記事です。作品の事実関係は下記の資料を参照し、聴きどころは編集上の解釈として記しています。AIによる編集・検査を実施しており、第三者の読者による実査ではありません。